シエラレオネ 採掘現場の声Voices from the Mineムービーを見に行って

ドキュメンタリー ダイヤモンドの来た道 と題された講演会を東京外語大まで聴きに行ってきました。 このドキュメンタリーフィルムは、ダイヤモンド原石の採掘地のシエラレオネとダイヤモンド取引の中心ベルギーのアントワープ双方の関係者からの取材からは、シエラレオネの採掘場で手掘りする村人の段階ではまだ単なる石なのが、仲買人、密輸、仕入れ、小売に辿り着いて業者によって鑑別されカッティングが施され研磨されダイヤモンドに変わっていくまでのしくみを知る手掛かりになりました。

東京外語大東京外語大 講義棟

ダイヤモンドフォーピースによる講演会

人道支援団体による意識改革のボトムアップ作戦

この講演会のねらいは、グローバル経済の成果が行き渡らない産地アフリカに目を向けさせる啓発があると思いますが、この採掘現場を抱えるダイヤの原石産出国の児童労働や人権問題、搾取、汚職、密輸の問題を知らずにきらびやかなダイヤモンドにうつつを抜かし、幸せの象徴にして指輪にする平和を浮かび上がらせて実はその裏に人件侵害があるというような、先進国の貪欲さとか無知を指摘したいわけではないはずです。ダイヤへ負のイメージを学生さんたちへ喧伝することは、ダイヤモンド欲しくなくなるどころか、ダイヤを身に着けている人への見方も変え、業界をさらに衰退させ、ひいては鉱山にも負のスパイラルに陥る逆効果なのではないかという釈然としない気持ちも同時に芽生えてしまいました。だってダイヤモンドが抱える問題という言い方をされますが、ダイヤが悪い物なのでもなければ、ダイヤを持つことが悪いのでもなく、ダイヤに罪はないはず。クリーンなダイヤを流通させることができ、産地の鉱夫にその恵が届けばいいのですから。だめなのは原産国の弱くて悪いガバナンス、統治能力のなさの方。それとも、もっとダイヤをよこせ、富をよこせ、とダイヤが欲しくなること自体罪なのでしょうか。その無力感、罪悪感、偽善を寄付で和らげているだけでしょうか。支援物資が現地にとどけばまたその地で奪い合いの争奪戦が起こるとききます。

ダイヤが抱える諸問題なのではなく、ダイヤに携わる人に関心を持ってもらうために、ダイヤ産出国の問題を知ってもらおうという運動ならば、もっとダイヤを良く知るデヴィ夫人とか、かのう姉妹とか細木かず子さんらが御用達にしている宝飾大企業を動かす方が効果が望めそうな気がしました。そして人々のイメージを大切にする大企業は政治を動かし国際社会を動かしていって、世界に対して働きかけてどんどん大きなムーブメントを作って。アフリカに対して何か私にできることはないかという気持ちの次にくるのは、あまりにも無力。そしてアフリカがなんとかなるには、寄付ではなく、大きな世論なのだと思いますが、世界の貧困とダイヤで着飾る社会とを対比で見せながらダイヤのイメージを利用して意識改革するボトムアップ作戦なのだと思います。だからこそシエラレオネの紛争を国際社会が黙認せずに、禁輸や制裁と軍事力で終わらせることができた、うまくいった事例なのだと理解しています。次に湧いてくる疑問、これがコンゴに応用できないのでしょうか?

紛争地と資源の埋蔵地は一致しているのに、国際社会は黙認し続けたまま、アフリカの真ん中でずーっと戦争し続けているコンゴ民主共和国。タンタルで指輪を作ったことと、子どもが授業で習ってきたタンタル8割の原産国コンゴ民主共和国のつながりを知ったときはあまりにもショックでした。指輪が幸せになるどころか呪いになってしまうほど。

コンゴ内紛という言い方がされますが、コンゴ民主共和国の中の民族同士が紛争を起しているとか、武装勢力同志が紛争を起しているから戦争ではないというのは誤認で、実は近隣諸国ルワンダやウガンダ、ブルンジと諸外国の代理のような戦争になっていて、ダイヤモンドもコルタンも欲しいからそこに鍵のかかっていない宝石箱コンゴがあるからみんなが狙って奪いにくるのだとムクウェゲ氏も言っています。コンゴ民主共和国の首都キンシャサの真反対の遠く離れた東部が資源のある所。 遠すぎて政府の統治も及んでいないウガンダ、ルワンダ、ブルンジ側。

どんなビジネスでも原料の段階では二束三文です。原石かどうかを選別し、輸送し、鑑識眼で鑑定し、高い技術でカットし、研磨し、いかに付加価値をつけるデザインにし、職人の技や、価格競争、広告戦略、生き残りをかけたマーケティングそして、高い輸入関税を納め法人事業税も納め消費税も払い、都会の一等地に店舗を置き、照明を工夫して陳列しモデルを起用して雑誌に広告費を払ってジュエリーを夢を乗せて一流ブランドに仕立てているのを私たちはファッション誌などのメディアに刷り込まれています。。どんな石でもダイヤなのではありません。掘っているときは単なる石。ダイヤとは程遠い、炭素でできた石です。黄色味をおびたり茶色だったりゴミが混ざっているものがほとんどです。きれいな透明なダイヤになれるのはほんとうに奇跡。これは一般的な市場原理。

ダイヤモンドとしての価値が与えられるのは資源の原産国を出た後の工程。だからドキュメンタリーフォルムに出てくる貧困アフリカと富裕ベルギーの街を対比で見せる演出は貪欲と無知を強調しすぎて逆効果ではという感じもありました。

問題の本質は何ですか?

問題なのは資源国はずっと貧しいまま、ダイヤを埋蔵する地域、産出する本拠地が最も人権侵害と貧困を抱えたまま、ここが告発したい焦点で、フェアトレードと同じ。今やコーヒーもチョコレートもフェアトレードフェアやフェアトレードデイと言って意識を向けていて、ダイヤについてもそこに国際社会の目を向けさせられるのは、ダイヤモンドから利益を享受している業界であり、そこへプレッシャーをかけるのがエンドユーザー。

ここで勘違いしたくないことは、フェアトレードの概念というのは、大企業に改心させ生産者に対しフェアな価格を払わせようというキャンペーンではなくて。児童労働も児童徴兵も黙認しどうしても弱い立場、不利な立ち位置から抜け出せないしくみがどうにもならなくなっている、その川上のしくみにさかのぼって目を向けること。

日本的なふつうの視点からだと、生産者がいて、流通にのって物が届くというしくみがあると思いますが、実は地球の裏側では私たちが想像もできないほど極端に虐げられて人間扱いされないほどの貧困と搾取が川上にある国にはあってわたしたちが川下にいて、それを広く知らせたい、自由市場経済のグローバル化の結果、常に敗者になってしまう産出国の弱者がいることを知ろうという告発キャンペーンがフェアトレードなのだという理解でいいでしょうか。アフリカの歴史と植民地とヨーロッパの関係が根っこにあります。

(資料*仏 ジャンピエール・ボリス氏不公正貿易 一次産品の暗黒物語)

(資料* 発展途上国の資源政治学 政府はなぜ資源を無駄にするのか)

大講演会の質疑応答も英語でしたので、一部しかわかりませんでしたが参加していた外語大の学生さんが、「ダイヤモンドには私はあまり縁がないから、、」とおっしゃっていましたが、ふつうダイヤはダイソーの100均のダイヤモンドやすりでも100円で手に入るのですからその原料は数円。日本のダイヤモンドやすりにされるのは本物のダイヤですし、ガラス窓をまっすぐ製図通りにカットするのもダイヤモンドカッターです。硬い物を切るのに生活の中に入り込んでいるのです。ダイヤは実際には工業ダイヤが日常で使われていても、取りざたされません。ダイヤモンドという響きはコマーシャルが作り出した高級なイメージをまとっています。コストをかけて打たれた大企業の一流ブランドによって作られたイメージに誰もが便乗しています。ダイヤモンドとフェアトレードを言うとき、ダイヤモンドを着ける人だけの問題ではなく、先進国の人みんなの問題だと伝えなければみんなぴんとこないはず。いまどきの学生さんはダイヤのエンゲージリングに興味がありません。唯一の人とか愛の証の指輪とか誓いの結婚指輪とかふたつとない天然のダイヤモンドとか、おまじないのようにCMで流され、婚約指輪は給料の3カ月分です、スイートテンダイヤモンドと広告した時代の魔法はとっくに解けてしまったのかもしれません。講演会に参加している学生の中にはアフリカ系留学生も多くいました。

日本の最南端で作られるコーヒーは、大企業のバックアップもあり、気候面のハンディ、コスト高にもかかわらず生産が行われています。販売価格も高くなってもそれがきちんと生産者へも還元されます。それと同様に原産国にも権利が認められたトレードが行われ、貧困から抜け出すための糧に貢献できるよう積極的に買っていけるような交易のためにフェアトレードキャンペーンがあるのだと思います。

ダイヤモンドから得る利益と供給源https://www.globalwitness.org/en/blog/if-real-rare-diamond-world-responsibly-sourced-rarer-still/グローバルウィットネス

ダイヤモンドに匹敵する存在がタンタルの原料コルタン、別名をブルーゴールドと呼ばれたりしています。 ルワンダにはコルタンがないにもかかわらず、ルワンダ軍はコルタンの販売から18か月ごとに2億5,000万ドルを受け取ります。
Coltan, l’oro azzurro. L’esercito ruandese ottiene 250 milioni dollari ogni 18 mesi dalla vendita del coltan, anche se il Ruanda non possiede coltan.
https://www.jpic-jp.org/newsletter/2012/april/it/index4.php